大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和27年(ラ)178号 決定 1952年9月29日

抗告人 小村勝男

相手方 坂倉ヨネ

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の要旨は、

(一)  被相続人坂倉吉雄の遺産である原審判添附目録記載の宅地及び建物の価格につき、原審は、二回にわたつて鑑定せしめたところ、第一の鑑定人は金五十六万円と鑑定し、第二の鑑定人は金三十二万円と鑑定したところ、原審は相手方に有利な第二の鑑定を採用した。抗告人は、本件土地建物の時価は百二十万円が相当であると考えるので原審の判断に承服できない。しかのみならず、この第二の鑑定人佐田某は、相手方の二女ハナの夫、井川隆男の妹の夫の兄という関係にあるのであるからこの点からいつても、原審が佐田某の鑑定の結果を採用したのは不当である。

(二)  相手方は、その息子昭二、二十六歳(日本○○○会社工員、月給九千円)及その娘キク(月給四千円)と同居し、畑三百坪に野菜を作り、裕福な生活をしているが、抗告人は八十五歳の老人で一銭の収入もないから、本件遺産を売却して、養子を貰うつもりであるから、原審の二千円づつの月賦支払を命じた審判には承服できない。

(三)  原審が本件遺産の分割をするにあたつて、競売を命じなかつたのは不当である。もし、審判において競売を命じない慣習であるならば、現物分割とするのが相当である。

(四)  本件遺産は抗告人が若い時に作つたもので、亡吉雄三歳の時同人の所有名義にしたけれども、実際は、抗告人が引きつづき所有していたものであるから、本件遺産の競売をしない場合には、本件遺産を抗告人の所有とし、その価格の二分の一を相手方に交付するのが相当である。

よつて、「原審判を取り消す。原審判添附目録表示の土地建物を競売に附し、その売得金を抗告人と相手方と二等分する。」との審判を求める。もし競売に附することが不可能であれば、「原審判添附目録表示の土地建物を別紙第二目録第三目録に分割し、抗告人と相手方とはくぢ引にてその一を取得する。」との審判を求めるというにある。

よつて按ずるに、遺産の分割は遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の職業その他一切の事情を考慮してなすべきものであり、本件記録に表われた一切の事情、ことに相手方と抗告人との内縁関係から出生した二男五女を相手方が本件建物からの収益で養育してきたこと、本件建物が現に相手方の管理するところであり、抗告人との間に出生した二子は現に相手方と生活していること、本件建物は登記簿上は二棟となつているが、事実上は三棟が棟を接して棟つづきの長屋のようになつており、西端の一戸に相手方が居住し、東側六戸を管理して、これを小村操外五名に賃貸していることを考慮するときは、原審判のように価格分割の方式を採用することが相当であり、前記賃貸家屋の賃料合計が月額金二千百円に過ぎないこと等を参酌すれば、原審が鑑定人佐田謹二鑑定の結果を採用したことは相当であるといわなければならぬ。

右佐田謹二が故意に不当に安価に鑑定したとの証左は見当らない。

その他原審判に現われた一切の事情を考慮すれば、原審判は相当であるというべきであつて、抗告人の抗告理由は、単に抗告人にとつて都合よき分割方法を提示したに止まり、とるに足らぬ。

よつて本抗告は理由なしとして棄却すべく、よつて主文のとおり決定する。

第二目録

○○郡○○○町大字○○○地内字○○○ ○○○番の○宅地所在

一、木造板葺平屋建一棟

建坪四十六坪二合五勺

右同所同番の○

一、宅地 九十六坪

第三目録

○○○郡○○○町大字○○○地内○○○ ○○○番の○宅地所在

一、木造板葺平家建一棟

建坪四十六坪五合

右同所○○○番の○

一、宅地 三十五坪

右同所○○○番の○

一、宅地 十一坪

右同所○○○番の○

一、宅地 四十坪

右同所○○○番の○

一、宅地 十坪

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例